カビと腐れ(腐朽)はどう違うの?怖いのは木材腐朽!|シロアリ1番!

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シロアリコラム

投稿日 2018.11.20 / 更新日 2022.12.08

湿気・カビ腐れ対策

カビと腐れ(腐朽)はどう違うの?怖いのは木材腐朽!

腐朽菌

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

(公社)日本しろあり対策協会 防除技術委員

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
YouTube:シロアリ駆除Channel

こんにちは。シロアリ1番!の田中です。

今回はカビと腐朽(腐れ)の違いについてお話ししていきます。

カビと腐朽(腐れ)は湿気によって生まれることから同様に扱われがちですが、全くの別物です。

確かにカビも腐朽菌も同じ菌類の仲間ですが、カビは木材の主要成分を分解することはありません。

しかし、腐朽菌は木材の90~95%を占める主要成分(セルロースやヘミセルロースなど)を分解して腐らせます。そのため、住まいにとっては“カビ”よりも“腐朽対策”の方が大切になります。

腐朽菌は木材を劣化させる

腐朽菌は、木材を分解する酵素(ラッカーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ)を分泌し、その作用で木材の組織構造を分解します。木材細胞壁の骨格を構成するセルロースやヘミセルロース、リグニンが主に分解されてしまうため、木材に形態的な損傷と著しい耐久力の低下を発生させます。

これがいわゆる腐朽(ふきゅう)と一般的に呼ばれている現象です。

また、この腐朽に関しても幾つかのタイプ(腐朽様式)に分けられますが、私達が関係している建物においての腐朽はその殆どが褐色腐朽と呼ばれるものであり、白色腐朽や軟腐朽といった腐朽は建築では稀な現象になります。

床下などで褐色腐朽菌というと、主にナミダタケやイドタケ、イチョウタケといったものが多く見られます。

例えば、ナミダタケだと比較的涼しい環境を好み、土壌との関係性を強く持っている菌です。土壌中に深く木の根のように根状菌糸束(水を吸い上げるためのもの)が土と木部を連絡していることがあります。

褐色腐朽の特徴としては、その名の通り木材が褐色に腐朽していくことでも知られ、木材主要3成分のうちセルロースとヘミセルロースを分解し、リグニンは分解できません。

なぜ、この褐色腐朽が建築においてよく発生するのかというと、この褐色腐朽菌が好んで繁殖するのが針葉樹だからです。

建築ではこの針葉樹材がよく用いられることから褐色腐朽の頻度が高くなっているというわけです。

また、「これは褐色腐朽菌だ」と見分けられる特徴もあります。

それは劣化の際に木材が長方形のブロック状に崩れていく腐朽、これが褐色腐朽の特徴です。

木材を鉄筋コンクリートで例えると鉄筋部であるセルロースや鉄筋をつなぐ針金であるヘミセルロースが分解され間のコンクリート部であるリグニンのみが残るので長方形に崩れていくのです。

カビは木材の耐久度を低下させない?

一方、カビは表面汚染菌と呼ばれるもので、木材の表面で繁殖します。

木材に含まれる糖類やアミノ酸、タンパク質といった微量成分のほか、木材に付着した汚れなどを栄養源としています。

カビは木材腐朽菌のように木材の強度を低下させることはありません。というのも、主要成分(細胞壁成分)であるセルロースなどは分解できず、全体の1~5%程度の抽出成分しか栄養にできないためです。そのため、極端な話ですが、カビだらけの壁を数年間放っておいても、構造部材の耐久性に大きな影響を与えることはないのです。

ここで、一つ「カビる」と「腐る」を見分けられるようになっておくと今後みなさんがこれらの現象を見つけた際に役立つかもしれません。

一般的に「カビる」という現象は、先程もお伝えした通り、木材の主要成分を分解しないので、木材上での菌糸体は繁殖が貧弱で本当に木材の表面に薄っすらと被さるように生育していくだけであるのに対して、「腐る」の場合は菌糸体の繁殖が比にならないほど旺盛であり、そのことから白い綿状に盛り上がっていたり、亀裂などが生じていたり、キノコが発生していたりするので慣れてくれば、「これは腐れだ」「これはカビだ」と判断が付くようになってきます。

また、そのような場合はドライバー等で木部を押してみて下さい。

「カビる」の場合、カビ自体は先程木材の強度を低下させる力はないとお伝えした通り、木部内部に影響が出ないため、ドライバーで押しても硬いままです。

ところが「腐る」の場合だと腐朽菌が内部のセルロースやヘミセルロースを分解しているため、強度が著しく下がっていて、ドライバーで押すと抵抗なく刺さってしまうことが多いです。

また、カビは木材だけでなく、特に湿気の多い梅雨や台風の時期には食べ物だったり衣類、お風呂場の壁などにも発生します。ご存知の通り、カビは不衛生で臭いもあり、食中毒やアレルギーの原因になることもあります。

カビは腐朽菌の指標となる

カビ自体が家に悪影響を与えることがなくても、カビは腐朽菌と同じように湿気(水分)を好みますので「カビが生える環境=腐りやすい環境」と捉えることができます。

実際に「木材の表面にカビが発生している家の床下では、同じように木材腐朽菌により腐れが発生していた」というケースが多々あります。つまり、カビの発生は腐朽の指標となるのです。

さらに、カビ自体にも湿気が含まれているので、押入れなどにカビが生えたら腐朽の可能性があると考えてもよいかもしれません。また、カビを拭き取って清潔にしても根本的な解決にはなりませんので、その原因となっている湿気を排除しなければなりません。

そのためには、床下の湿気対策(換気扇の設置や防湿シートの敷設など)で、湿度の低い環境をつくることが必要です。

また、床下に湿気がこもっていると、カビや腐朽菌だけでなくシロアリの被害に遭う可能性も高くなります。やはり、カビや腐朽を未然に防ぐためには、定期的な点検と適切なメンテナンスが肝要といえそうですね。