アメリカカンザイシロアリの調査・駆除に密着!|シロアリ1番!

COLUMN

シロアリコラム

投稿日 2018.05.28 / 更新日 2023.12.27

乾材シロアリ

アメリカカンザイシロアリの調査・駆除に密着!

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

(公社)日本しろあり対策協会 防除技術委員

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
YouTube:シロアリ駆除Channel

先日、外来種のシロアリであるアメリカカンザイシロアリの駆除を実施してきました。

アメリカカンザイシロアリと聞いてピンとくる方も少ないと思いますが、日本ではまだまだマイナーな害虫です。北アメリカ原産のシロアリで、すでに日本各地に定着しつつあると言われています。関東周辺でも被害が頻発しつつあり、今回は被害を受けている建物が解体されるとのことで、周囲への拡散防止のために解体前駆除を実施する運びとなりました。

その時の様子に密着しながらアメリカカンザイシロアリの駆除についてレポートしていきます。

アメリカカンザイシロアリはシロアリ駆除が通用しない

アメリカカンザイシロアリの”カンザイ”は”乾材”のことで、乾いた木材でも関係なくエサにしてしまいます。日本で一般的なイエシロアリヤマトシロアリは、地中を移動し湿った木材を好むシロアリです。この2種類は必ず地中から建物に侵入するため、床下の薬剤処理によるシロアリ予防が確立されています。

しかし、アメリカカンザイシロアリの場合、羽アリが木材内に穿孔・侵入するため、どこからでも侵入し被害を受ける恐れがあります。アメリカカンザイシロアリには通常のシロアリ駆除が通用しないのです。

ヒアリのように人間に直接害がある外来生物が世間で認知されている一方、建物の厄介者が日本に侵入していることはそこまで知られていません。

地震大国の日本において、シロアリの食害による木材の強度低下は大地震発生時の建物倒壊に間接的に影響を与えています。アメリカカンザイシロアリだと気づかずに被害を見逃されることがないように、私たちも努めていかなければなりません。

アメリカカンザイシロアリの事前調査

アメリカカンザイシロアリは非常に厄介な生き物ですが適した駆除工法があります。まずは事前調査で被害の実態を確認することから始まります。

まず、室内に入ると至る所に木屑のような粉粒が散乱していました。下の写真は階段に散らばっている状態です。

アメリカカンザイシロアリの糞

(写真)階段にまばらに落ちている木くずのような砂粒。
アメリカカンザイシロアリの糞

(写真)0.9mmほどの粒。俵状で中央に凹みがある。

 
この粒を拡大したものが2枚目の写真です。俵のようなカタチをしていますね。実はこの粒、アメリカカンザイシロアリの糞です。これが見つかれば、100%アメリカカンザイシロアリの被害を受けていることになります。

この糞があるということは家の中の木材を食べた後ということ。逆に言ってしまえば、この糞が見つかればそこにシロアリが潜んでいるのは間違いありません。アメリカカンザイシロアリ調査の第一歩はこの糞の確認から始まります

糞の特徴は?

糞は肉眼では小さな砂粒にしか見えません。色はこげ茶色~肌色まで様々です。これは食べた木材の色によるものと思われます。大きさは0.7~0.9mmほどです。

アメリカ乾材シロアリの糞

ルーペや顕微鏡があれば俵のようなカタチをして縦線が入っているのを確認できると思います。細かく確認出来なくても、硬さである程度判別することができます。アメリカカンザイシロアリの糞は非常に固く、指で潰すことはできません。指ですり潰せるなら別の原因が考えられます。

糞はどこから排出されている?

この糞がどこから排出されたかを調べないことには駆除はできません。ですから排出口(排糞孔、糞孔)を徹底的に調べます。

アメリカカンザイシロアリの糞口

今回は糞孔から糞が溢れている場所があり、すぐに発見できました。上の写真のように画鋲の穴のような小さな穴が開いています。これを見つけるのは実は難しく、ぱっと見てアメリカカンザイシロアリの糞孔なのか、人工的な穴なのかを見分けるまでには多くの現場をこなす必要があります。

2階の被害

今までの経験上、アメリカカンザイシロアリの被害は1階よりも2階に多く見られます。こちらの建物でも、2階のいたるところに糞が散乱していました。そして、表面的な被害も見つかりました。

窓枠のアメリカカンザイシロアリ被害

窓枠にみられた被害です。アメリカカンザイシロアリの被害は窓枠から始まることが多く、こちらでも同様の現象が起きていました。窓サッシ周辺の隙間から入り込む可能性が高いことや、窓の開け締めで羽アリが侵入する可能性があるためと考えられます。

長押の糞

長押(カーテンレールの辺り)を脚立に上がって確認してみると、長押(なげし)のくぼみにも糞が溜まってました。長押は壁に沿って付けられる造作ですから、長押に糞が溜まっているということは、天井の角から糞が落ちてきていると考えるのが妥当です。

天井廻り縁の隙間

天井の角(廻り縁)には隙間が僅かにあり、そこに糞が溜まっています。間違いなくここから糞が落下しているのでしょう。ということは、この糞は屋根裏から落ちてきていることになります。

天井板の糞口

天井板を確認したところ、ここにも糞の排出孔が無数にありました。これでは天井のいたるところから糞が落ちて来てしまいます。屋根裏(小屋裏)も実は非常に被害が多い場所であるため、小屋裏にも入って確認してみます。

小屋裏に侵入すると

小屋裏に入ると、びっくりするほどの糞が堆積していました。

天井裏の糞

断熱材の上に堆積した糞です。このように堆積した場所が十数箇所もありました。この糞の質量が少なくとも建物の木材から失われていると考えると恐ろしいですよね。小屋裏は被害が大きくなりがちな空間です。

堆積したアメリカカンザイシロアリの糞

小屋裏には外からの通風を取り入れる換気孔があり、そこからシロアリが入ってきます。小屋裏の木材はほぼ100%露出しているので、好きな場所から木材を穿孔、営巣を始めます。それから数年間、誰にも気付かれることなく木材を食い荒らし巣を大きくしていきます。

(写真)木材の継ぎ目を埋めるように構造物で覆っている。

 
成熟した巣からは、新たな巣を作るための羽アリが誕生します。その羽アリが小屋裏を飛び回って新たな巣を小屋裏の別の場所に作ります。これが何年も繰り返されたらどうなってしまうか、容易に想像がつきますよね。

ただ、小屋裏は夏場に50℃を上回るほど暑くなります。50℃はシロアリが全滅するほどの猛烈な暑さです。それでも死なずに繁殖を続けられるのは、木材内という温度変化の少ない場所に巣を作っているからです。

最後に外を調査

外回りもアメリカカンザイシロアリの形跡を見つけるポイントですから最後に調べました。すると、通気口に糞が堆積しているところが。

通気孔の糞ですが被害密集地域ではよく見られます。普段の生活でも確認しやすい場所ですので、このような堆積物が無いかを定期的に確認してると早期発見に繋がります。

木造の屋外倉庫にある庇にも糞が大量に溜まっています。屋外の木材も被害を真っ先に受けやすいポイントです。

外壁を剥がして被害実態を確認してみたところ

通気口から糞が出ていた場所は、床下からみたところ全く被害が無かったため、外壁を解体して被害実態を確認していきます。(今回は解体現場のため実施しました)

剥がした状態です。基礎コンクリートの上に置かれた土台がシロアリの食害を受けています。これは紛れもなくアメリカカンザイシロアリの被害です。

今回の調査で驚きだったのが、アメリカカンザイシロアリの女王と王がそこにいたことです。逃げずにじっとしているのは開けた箇所が王室だったのでしょう。シロアリからすると突然のことでしょうし、かわいそうになりますが、家を食い荒らす害虫としてこの時ばかりは考えなくてはなりません。

室内、小屋裏、床下、外回りと全体を確認していきこちらの建物のアメリカカンザイシロアリ被害調査は完了しました。被害としては、建物の土台から小屋裏まで全体に拡がっており、その全ての被害部に処理をおこなわなければなりません。この調査を元に今度は駆除工事を実施していきます。

アメリカカンザイシロアリの解体前駆除

十分な調査を行ったところでいよいよ建物解体前の駆除をおこなっていきます。

屋根裏での駆除工事

(写真)屋根裏での駆除工事。足の踏み場が無いため2人以上で作業をする。
駆除工事用の機材

(写真)乾材シロアリ駆除に用いる施工機材。薬剤をムース状にすることができる。

 
方法は様々ですが、今回は最も基本的な穿孔注入処理を実施しました。小屋裏は足の踏み場所がほとんど無いので通常は2人ほどで作業をしていきます。(白い断熱材の部分は体重をかけると天井を突き破ってしまいます)

穿孔処理

(写真)被害部材に穴を開ける。この穴に薬剤を注入する。
薬剤注入

(写真)専用ノズルでムース剤を注入する。木材の空洞を伝い別の穴から薬剤が吹き出る。

 
アメリカカンザイシロアリに用いる薬剤の有効成分はクロチアニジンで、床下で使われるものと同じものです。ただし、木材内部にできる限り長く留めておくために液状ではなくムース状の薬剤を使います

これを注入機材で木部内部のシロアリが生息する空間へと薬剤を充填していくわけですが、注入すると隣に開けた穴から薬剤が飛び出します。これは穴と穴が繋がっているからで、内部にシロアリの食害による空洞が無数にあることがわかります。

アメリカカンザイシロアリの被害材

(写真)アメリカカンザイシロアリの被害を受けた柱。内部に空洞ができているのがわかる。
アメリカカンザイシロアリの被害材

(写真)被害材の内部を切り開いた状態。表面を残して内部だけ食べられている。

 
アメリカカンザイシロアリを駆除するには、これらの狭い空間一つ一つに薬剤を浸透させる必要があります。この作業を小屋裏、2階、1階の全ての被害箇所で行うため、建物1棟の解体前駆除となると丸2日間程度の時間を要します。

アメリカカンザイシロアリの駆除を終えて

今回のアメリカカンザイシロアリ駆除施工で1番衝撃だったのは、そこまで被害がなさそうな木材でも薬剤を入れるとどんどんムース剤が入っていく箇所が非常に多かったことです。見えない所で被害が進行するとはまさにこのことかと感じざるを得ませんでした。

表面は何とも無さそうでも、実は水面下でシロアリの被害が着々と進行している。そんな事態がどんな建物でも起こりうると認識しておく必要があると思います。

この記事をここまで読んでいただいた方はアメリカカンザイシロアリの潜在的な怖さや特殊性を理解できたのではないでしょうか。とにかく早期発見が大切ですので、お住まいの地域で被害を聞いたことが無かったとしても、日頃からアメリカカンザイシロアリの糞や形跡に注意してみてください。

もしも、写真のような穴や茶色い粒をお家や家の周辺で見かけたら、一度専門業者に調査をしてもらうと確実かなと思います。アメリカカンザイシロアリのように木材の内部に侵入したシロアリを市販薬だけで対処するのは困難ですので、まずはお気軽に、皆様からのご連絡をお待ちしております。

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